今秋話題のSIMフリースマートフォン(以下スマホ)がある。株式会社UPQ(アップキュー)が発売した「UPQ phoneA01」と、プラスワン・マーケティング株式会社が発売した「FREETEL 雅(みやび)」。ともに2万円を切る低価格でコストパフォーマンスがよく、発売前から注目されていた。
実は私も「FREETEL 雅」に興味があり、発売当日ヨドバシカメラ博多店まで買いに行ったが、午前10時には売り切れたと言われ買い損ねてしまった。
即日完売といっても仕入れ在庫が数台しかなくても即日完売になる。そこで入荷台数を尋ねると10台とのこと。
大手キャリアで扱っているスマホならいざしらず、無名に近いベンチャー系企業が発売したSIMフリースマホ、要はdocomoやau、ソフトバンクなどのキャリアに販売ネットワークを持たず、当然それらのキャリアでは取り扱ってももらえないスマホが、ヨドバシカメラ博多店で販売開始とほぼ同時に10台全てが売り切れたわけだから好評と言っていいだろう。その後のネット書き込みを見ていても「コストパフォーマンスがいい」「満足度の高い、買って損のない端末の一つ」などと概ね高評価である。
「安いが、スペックが低い1世代前の端末」というちょっと前のSIMフリースマホとは雲泥の差(というのは少し言い過ぎか、でもそれに近い)だ。通常この価格ならROM8G、RAM1Gというところだろうが、「雅」はROM32G、RAM2G。内蔵カメラは1300万画素。デュアルSIMでサイズは5インチと私の希望ともピッタリだった。ただ、サイズだけは持ちやすく、胸ポケットにも入る4.5インチ程度の方が好みだが。
まあ、それはさておき、ここでスマホのスペックや使い勝手について述べようとしているのではない。前出の2社を見て「メーカーとは一体何か」ということを考えたのと同時に、中小製造業はこれら2社のやり方から学ぶべき点があると感じたので、以下にそれらについて述べてみたい。
UPQのやり方から学ぼう
UPQから学ぶものは多い(プラス面だけでなく反面教師としても)−−。といっても多くの人には「UPQってどんな会社?」という感じに違いない。それもそのはず、同社は2015年7月に設立された生まれたてホヤホヤのベンチャー企業である。
完全にアーリーステージのベンチャー企業で、まだ海のものとも山のものとも分からない。今後大化けするかもしれないし、数年後には消えているかもしれない。にもかかわらずメディアが派手に取り上げ、大々的に同社製品の宣伝に一役買ったのだから、不思議だ。
メディア(といっても一部だが)の取り上げ方はまるで何かに取り憑かれたかのようで、冷静な分析も見通しもなく、単なる宣伝機関に堕しているのは首を傾げざるを得ないが、よく見ていくと彼らが飛びつきたがるいくつかの要素があることが分かる。
1.経歴がウリになる
一般的にメディアが取り上げたがる要素にはいくつかのキーワードがある。
「ニュース性」
「ユニークさ」
「異分野への進出(挑戦)」
「弱者による起業」
「若い女性」
などがそうだ。
ここでUPQの代表取締役・中澤優子氏の経歴を見てみよう。2007年、カシオ計算機株式会社に入社し5年間在籍。その間、携帯電話・スマホの商品企画を担当したとのこと。同社退社後、2013年、「1対1のモノづくりもしてみたい」と「準備期間1か月」で秋葉原にカフェを開業。そして2015年7月にUPQを設立。その2か月後に「UPQ Phone A01」というスマホを発売。
この経歴の「ユニークさ」だけでもメディアが取り上げたがるのは分かる。しかも年齢30歳という「若い女性」がカフェオーナーから「モノづくり」という「異業種へ転身」し、わずか2か月で商品開発・販売したのだ。
ここには「ニュース性」「ユニークさ」「異分野への挑戦」「弱者(若い女性)による起業」というキーワード全てが含まれている。つまり起業に至る経歴そのものがウリになっているのだ。
「モノづくりには物語り」が必要と言い換えてもいいが、多くの中小零細企業にはこの観点が欠けている。
いまや愚直にモノを作り続けるだけでは売れないのだ。商品を売るためには、商品に「もの語り」が付随するかどうか、どのような「もの語り」を付随させられるかどうかで、販路の広がり、協力者の出現等が変わる。
例えばUPQの場合、DMMがいち早くネット販売で、ついでビックカメラグループが店頭販売で協力(150店舗)している。設立2か月、社員本人のみ(恐らく)の企業にこうした大手が協力を申し出るのも異例だろう。
(2)に続く
かわいいスマホ、UPQ Phone A01はビックカメラで取り扱っている
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